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広島地方裁判所尾道支部 昭和39年(ヨ)72号 決定

債権者 河上仙太郎

債務者 田中組こと田中民男 外一名

主文

債務者らは連帯して債権者に対し、仮りに、昭和三九年一一月以降昭和四〇年一〇月までの間毎月末日限り金一万五、〇〇〇円を支払え。

申請費用は債務者らの連帯負担とする。

理由

債権者は昭和三九年一月二七日午前七時四〇分頃豊田郡瀬戸田町大字萩二、四二四番地堀江三吏方附近路上に於いて、債務者田中の保有し債務者山本の運転していた広六に二〇-三六号自動三輪車に衝突され、右下腿骨折等の傷害を受け、昭和三九年一一月二五日現在なほ治癒せず今後なほ約一年間位マツサージなどの治療を要すること及び労働力を喪失していること、並びに本件傷害は債務者山本の過失によるものであること、債権者の損害が(一)得べかりし利益の喪失合計金四、四七万三、六八四円、(二)治療費雑費合計金二九万二、七一九円、(三)藉謝料金四〇万円であるが右全損害額中金六〇万円について毎月五万円宛の支払を求めそして債権者は労働力の喪失により製パン業をやめなければならなくなり、資産を精算したところ、純手残り資産が現金約一〇万円位のみとなり妻と学令期にある子供三人の生計費は勿論本件傷害の治寮費の捻出が不可能な状態となつたことを主張し且つ右主張事実を疎明した。そこで当裁判所は、各当事者を審尋したうえ、債権者の仮処分申請の理由があるものと認め、債務者らの資産、収入月額などを考慮し治療費を月額六、〇〇〇円の限度で又得べかりし喪失利益についてはそのうちから債権者自身の生計費に使用し得る筈であり且つ要する金額としそれを月額九、〇〇〇円の限度で債務者らをして仮に支払わしめる必要性を認め且つ治療費については治療に要する期間一年得べかりし喪失利益については、本件に関する本案訴訟の提起された場合、第一審本案判決までの審理期間を約一二月と推定(現在当裁判所の知り得る司法統計報告-最高裁判所事務総局発行-に登載の広島地方裁判所関係昭和三六年度分に基づいて算出した平均審理期間は約一四ケ月であるが近時この種事案の審理期間が短縮される傾向にあることを斟酌した)し、民事訴訟法第七六〇条、第八九条により主文のとおり決定する。

(裁判官 畠山勝美)

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